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【全員囚人?】刑務所のラップバンド「LIFERS GROUP」


90年代に短い期間活動していたメンバー全員が重犯罪者専用の刑務所の囚人で結成された「Lifers Group(ライファーズ・グループ)」というラップクループをご存知でしょうか

この「Lifers Group」。もちろん全員が囚人という事で話題になったのですが、只の色物ではなく、その音楽性とラップスキルは本物で、なんと「グラミー賞」の1部門にノミネートまでされているんです。

今日は私がラップというブラックミュージックに興味を持ったきっかけでもある「Lifers Group」について記述していきます。

グラミー賞にもノミネート・・が会場には行けず

グラミー賞にノミネートされながらも彼らは会場に姿を見せなかった
グラミー賞にノミネートされながらも彼らは会場に姿を見せなかった

1992年、アメリカの音楽エンターテインメント界で最も格式があり、最も栄誉ある第34回グラミー賞で驚くべき事態が起こりました。

ベストロングフォームミュージックビデオ部門」にノミネートされたラップグループである「Lifers Group」が会場に姿を見せなかったのです。

何故なら彼らは全員が囚人で、会場に行きたくても行けない状況にあったからなのです。

グラミー賞が行われたラジオシティホールの程近くの重犯罪者専用の「ラーウェイ刑務所」に彼らは収監されており、ほとんどが殺人・強盗・放火などで終身刑の囚人たちなのです。

そんな重犯罪者たちがグラミー賞に出席する許可が出るわけはなく、彼らは刑務所の中でグラミー賞の様子をテレビで見ているしかなかったのです。

「Lifers Group」の結成

「Lifers Group」のリーダーである「Maxwell Melvins(マックスウェル・メルビン)」は1960年ニューヨークのハーレムで生まれました。

初めての犯罪は彼が11歳の事。罪名は家宅侵入。

未成年なこともあり刑務所に行くことはなかったのですが、その後も彼は窃盗・放火・器物破損などの犯罪を繰り返しました。

そしてメルビンが21歳の時、盗みに入って警察に見つかり逃走する際、発砲したところそれが通行人に当たり通行人は死亡。彼は殺人と拳銃不法所持で逮捕されてしまいます。

刑務所への間違った憧れが当時の不良たちにはあった

当時のハーレムの不良たちには刑務所をかっこいいものだという幻想があった
当時のハーレムの不良たちには刑務所をかっこいいものだという幻想があった

当時、ハーレムの少年たちの間では刑務所の中の世界はかっこいいものと美化されていて、不良たちは刑務所に入ることにステータスのようなものを感じていました。

メルビンも同様で、刑務所に憧れのようなものがあったのです。
しかしながら、実際メルビンが見た刑務所は全く違うものでした。

毎日のように起こる暴力、男同士でのホモ行為、家畜の餌のような食事。
そこには真に地獄のような生活が待っていたのです。

メルビンは思いました。

「将来のある子供たちがこんな地獄のようなところに入っては絶対にいけない」
「彼らのつまらない間違った刑務所の幻想を正さなけれはいけない」

そのように考えたメルビンは刑務所の中にいる自分が子供たちの為に何かできることがあるのではないかと思いを巡らせていました。

ラップにより刑務所の実態を子供たちに伝えようと思い立った

不良たちに絶大な人気があるラップで刑務所の実態を伝えようと考えた
不良たちに絶大な人気があるラップで刑務所の実態を伝えようと考えた

そんなある日メルビンが刑務所内の娯楽室にいると、その中の囚人たちの何人かがラップを口ずさんでいる光景が目に映りました。
それを見たメルビンは「そうだ!これだ!」と思い立ったのです。

ラップが不良たちに与えるインパクト、影響は計り知れない。ラップを通して刑務所の中の実態を伝えることができれば。メルビンはそう考えたのです。

彼はさっそくラップグループの結成に乗り出しました。

まずはメンバー集めから。メルビンは囚人たち一人一人に声をかけ始めました。
初めは皆乗り気ではなかったものの、メルビンの熱い気持ちが伝わったのか徐々にメンバーが集まり始めたのです。

そしてついには10人以上もの大所帯のグループが出来上がりました。
そのすべてが、懲役100年にも上る凶悪犯や終身刑の囚人たちだったのです。

結成はしたもののレコードデビューという大きな壁が立ちはだかった

グループを結成したもののレコード会社が見つからない
グループを結成したもののレコード会社が見つからない

グループは結成したものの、刑務所の外の不良たちにメッセージが伝わらなければ意味がありません。

そのためにはレコード会社を探さないといけない。メルビンは面会に来た親類を通じてレコード会社に片っ端から打診したのですが、いい返事は貰えませんでした。
どのレコード会社にも囚人たちのレコード出したという前例がなかったのです。

そんなある日、レコード会社は決まらないもののまだ見ぬデビューに向けてラップの練習に励むメルビン達の姿を見て、刑務所の所長が声をかけてきたのです。

所長は彼らのラップを聴いて痛く気に入ったようでした。
メルビンはここぞとばかりに所長にレコードデビューをして不良たちにメッセージを届けるという自分たちの計画を打ち明けたのです。
すると所長はこの打診を快く引き受けて、所長自らレコード会社に話を持ち掛けました。

そんな幸運も手伝ってか、ついに彼ら「Lifers Group」のレコード会社が決まったのです。

そしてレコードデビューからグラミー賞ノミネートへ

Lifers Group」結成からおよそ1年後。ついに彼らはレコーディングの日を迎えました。

メンバーは全員極悪の囚人なのでもちろん、レコーディングスタジオに出向くことができません。そのため刑務所内に大量の機材を持ち込みレコーディングは行われました。

また同時にPVの撮影も刑務所内で行われました。

刑務所内のリアルな生活をうたった彼らのラップが与えるインパクトと迫力は発売と同時に大きな話題となり、大ヒット。一週間に3万枚ものレコードを売り上げたのです。

そして遂には彼ら「Lifers Group」はグラミー賞のベストロングフォームミュージックビデオ部門にノミネートされるまでになったのです。

「Lifers Group」その後

短い活動期間で彼らは世間に凄まじいインパクトを与えた
短い活動期間で彼らは世間に凄まじいインパクトを与えた

93年までに彼らは2枚のアルバムと何曲かのシングルを発表しましたが、その後活動はしていません。

メンバーが他の刑務所に移送されたり、独房送りになってしまったりで事実上活動ができなくなってしまったためです。

  • 1991: Lifers Group
  • 1991: #66064 EP
  • 1991: Belly Of The Beast / The Real Deal
  • 1991: Real Deal / Lesson 4
  • 1991: The Real Deal
  • 1993: Jack U. Back (So You Wanna Be A Gangsta) / Living Proof (Remix)
  • 1993: Short Life Of A Gangsta

しかしながら短い活動期間にも関わらず彼らが世間に与えた衝撃は大きく世界中に彼らの、音楽が広まり日本でも未だにクラブなどでかかることがある程です。

それは彼らのラップの技量はもちろん、ラップ本来の成り立ちであるメッセージ性が強烈で全員囚人であるという本物の迫力が伝わってくるからに他ないのです。

「Lifers Group」の楽曲

最後に「Lifers Group」の楽曲を一部紹介します。

個々のラップの技術、多人数による迫力と畳みかけるマイクリレー。
個人的にあの「Wu-Tang Clan(ウータン・クラン)」にも引けを取らないと思っています。

特に「Jack U. Back」はおすすめ。

Lifers Group - Jack U. Back (So U Wanna Be A)

Youtubeに曲があがってなかったのでアルバムを載せておきます。
Jack U. Backは49分50秒くらいから。

Lifer's Group - Belly Of The Beast

Lifers Group - Short Life Of A Gangsta 

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