【パーソナルスペースを学ぶ】
男女・年齢・国や文化に
よっても
大きな差があるようです
それほど混んでいない電車やバスなんかで他にもスペースがあるのにやたらに近くに来る人。
ガラガラの飲食店でわざわざ隣に座ってくる人。
そういった人に不快感を感じたり落ち着かない気持ちになる人は多いと思います。
それは他者があなたの心理的な縄張りであるパーソナルスペースの中に入り込んできている為です。
パーソナルスペースは人によって範囲が変わります。
男女の違い、年齢での違い、国籍・文化によってもその大きさ(範囲)は異なるといいます。
また、相手との関係性やその時その場の状況によってもパーソナルスペースは変化します。
今回はそのパーソナルスペースについて記述していこうと思います。
パーソナルスペースについて知れば、もっと今まで以上に人付き合いや恋愛までもがうまくいくようになるかもしれません。
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CONTENTS
パーソナルスペースとは?
”パーソナルスペース(Personal-space)”とは他人が自分に近づいたときに不快に感じる範囲のことです。対人距離とも呼ばれています。
恋人や家族など親密な相手となるほどパーソナルスペースの範囲は狭く(近くにいても気にならない。むしろ心地いい)、逆に他人や嫌いな人になるほどパーソナルスペースは広くなります。
嫌いな人が近くにいたら不快になりますよね。
男女のパーソナルスペースの違い
パーソナルスペースは性別や年齢によっても範囲や大きさが違うことが分かっています。
まずは男女のパーソナルスペースの違いから見ていきましょう。
男性と女性とではパーソナルスペースの範囲(広さ)だけではなく、パーソナルスペースの形も違うといわれています。
下の図のように男性のパーソナルスペースは"楕円型"をしています。
前が一番広く、左右と後ろの半径はそれより狭くなっていることが分かります。
男性は隣にいられるよりも正面に人がいるのが一番気になるようです。
対して女性のパーソナルスペースはきれいな"円"となっており、前後・左右の距離が一定になっています。
女性のパーソナルスペースは男性より基本的に狭いといわれています。
そのため女性が無意識に男性のパーソナルスペース内に入ってしまうことがあり、男性は自分のパーソナルスペース内にいるその女性のことを意識してしまうことがあるようです。
ポイント
●男性のパーソナルスペースは楕円形で前方の範囲が広い。
●女性のパーソナルスペースはほぼ正円で男性よりも狭い傾向がある。
年齢によるパーソナルスペースの違い
パーソナルスペースは"年齢"によっても変化することが分かっています。
幼い子供は人との距離について学習する機会が少ないため誰彼かまわず近寄っていくのですが、概ね12歳になるころには大人と同じようにパーソナルスペースを意識しだします。
その後パーソナルスペースは年齢とともに大きくなっていき、40歳くらいが最も大きくなり、その後また小さくなっていくようです。
パーソナルスペースは「他人への依存度が大きいほど狭くなる」という研究結果があり、40歳くらいが最も大きいのは社会的にも独立しているためです。
その後老人に近づくにつれて他人への依存度が増していき、また狭く、小さくなっていくのです。
女性のほうが男性よりもややパーソナルスペースが狭いのは、この依存度によるものだともいわれています。
ポイント
●パーソナルスペースの大きさは年齢によっても変化する。
●他人への依存度が大きいほどパーソナルスペースが狭くなる傾向がある。
パーソナルスペースの種類
1966年アメリカの文化人類学者のエドワード・T・ホールがパーソナルスペースを以下の4つのゾーンに分類しました。
密接距離(0~45cm)
"密接距離"は4つの分類の中で最も短い距離で、恋人や家族など極めて親しい関係性の人のみが入ることを許される範囲となります。
この距離は特に会話をするというよりも恋人・配偶者へのスキンシップや子供を抱きしめたり、おんぶ・抱っこで保護したりが容易にできるような範囲となります。
個体距離(45cm~120cm)
"個体距離"は友人など親しい人であれば入っても不快には感じない距離です。
この距離だとお互いの表情は容易に読み取ることができるため会話に適した距離といえます。
併せて、手を伸ばせばお互いに触れることもできる距離なので、第三者から見ても双方が親しい関係であることがわかります。
異性とこの距離の中にいると恋人や配偶者から見られたときに浮気だと疑われてしまうかもしれません。
社会距離(120cm~360cm)
"社会距離"は会社の業務などで同僚や上司・取引先などと接するときにとられる距離の事です。
手を伸ばしても相手に触れることができない程度。机越しの対面での商談などをイメージしていただければいいと思います。
公衆距離(360cm以上)
"公衆距離"は講演会や演説などの公式の場でとられる広さのことで、話している側と聞いている側という関係性の時に用いられるような距離となります。
相手との関係が知り合い・友人等の個人的な関係ではなく公的な関係となります。例えば政治家などの演説や講演などをイメージしていただくとわかりやすいかと思います。
公衆距離はパーソナルスペースの分類の中では最も大きい距離で相手との個人的な会話も難しく、むしろ聞いている側がその場を離れたとしても特に問題とされないような距離となります。
国民性によって違うパーソナルスペース
パーソナルスペースには文化の違いが大きく関係していることがわかっています。
海外旅行をしたことがある方は「この国の人はやたら距離が近いな」と思ったことがある人は多いと思います。
ある研究で42か国、9000人の被験者に対して個々の国でパーソナルスペースに関する調査をしています。
以下の表で国別のパーソナルスペースをまとめています。
パーソナルスペースが広い国
- ルーマニア
- ハンガリー
- サウジアラビア
- トルコ
- ウガンダ
- パキスタン
- エストニア
- コロンビア
- 香港
- 中国
パーソナルスペースが狭い国
34.ギリシャ
35.スペイン
36.ロシア
37.スロバキア
38.オーストリア
39.ウクライナ
40.ブルガリア
41.ペルー
42.アルゼンチン
一番他人と距離をとっているのはルーマニア、一番近い距離はアルゼンチンという結果になっています。ルーマニアにおいてはアルゼンチンに比べ他人との距離を約2倍近くもとっていますね。
この結果パーソナルスペースは文化圏によってかなりの違いがあることがわかります。
残念ながら日本は調査対象の42か国の中には入っていないようなのですが、少なくとも中国よりはパーソナルスペースが広い印象です。
アルゼンチンやペルーといった南米の人が距離が近いのはなんとなくわかりますよね。みんな陽気でスキンシップが凄そうですから。
意外なのはロシア・スロバキア・ウクライナといった東ヨーロッパのロシア圏の人たちの距離が近かったことです。個人的にはパーソナルスペースが広いイメージでした。
だた、同じ東ヨーロッパ圏にあるルーマニア・ハンガリーは最もパーソナルスペースが広い・・
お隣の国でも文化圏が違うんでしょうね。興味深いです。
行列の並び方でわかる国別パーソナルスペースの違い
パーソナル・スペースには文化の差が大きく影響していることがわかりました。
ここでは行列の並び方によって見えてくる各国のパーソナルスペースの違いをご紹介します。
中国の並び方
私は中国人の友達がいるのですが、その子と話す時に日本人の友達より顔と顔の距離が近いことに気がつきました。
むしろ日本人は人との距離が遠い?
これはやはり色々な国民性などによる違いなのでしょうか?
私が日本で知り合った中国人の友人は皆ボディタッチが多く距離感が近い(男女問わず)のですが、偶々でしょうか?それとも、中国の方というのはボディタッチが多いのでしょうか?
中国人はボディータッチなどのスキンシップに抵抗感があまりないので、日本の我々よりもパーソナルスペースが狭くなるようです。
それにしても、この並び方はすごいですね。パーソナルスペースとかいう問題ではありません。男女関係なくビタビタに張り付いています。
この並び方は横入り防止の意味合いもあるようです。
インドの行列の並び方
インド人はもともと家族や親族のつながりが非常に強くて、狭い家で大人数で生活している人が多いとされています。その為、生まれた時からパーソナルスペースを保とうとする概念が少ないようです。
インドの満員電車とかすさまじいものがありますよね。
インド、アラバンの行列。
— Advance World News (@coronatruemovie) April 14, 2020
元々パーソナルスペースの近い国で、ソーシャルディスタンスは根付きにくい。#集団感染 #感染爆発pic.twitter.com/G6PVdqPZuV
フィンランド(北欧)の並び方
北欧人(フィンランド、ノルウェー、デンマーク、スウェーデンなど)はシャイで控えめな国民性の為か、パーソナルスペースがとても広いことで知られています。
それにしても、これは並んでいるのか?なんか笑ってしまいました。
日本人の並び方
日本人は欧米などと比べスキンシップはあまりとらない国民性で、北欧同様シャイでおとなしい人が多いため比較的パーソナルスペースは広いとされています。
しかしながら、日本は狭い国土に多数の人が暮らしているため、必然的に距離感が近くならざるを得ない状況が見られます。
例えば満員電車などですが、インドほどではないにしろ日本の満員電車は相当な密着率です。
また、住居も狭くなりがちで家族がいつも近くにいるという状況も多く、北欧ほどパーソナルスペースが広がらないのはそのためであるといえます。
それにしても、上にあげた写真は恐らく震災などでファミマに並んでいる行列かと思いますが、何となく落ち着きます。ちょうどいい感覚ですね。やはり私も日本人なのだなぁと実感しました。
まとめ
対人関係を円滑にするには相手のパーソナルスペースを思いやることが大切です。
人はそれぞれパーソナルスペースを持ち、人によってパーソナルスペースの範囲は様々です。
年齢・性別、国や文化によってもその範囲が違ってくるのです。
あまり気にしすぎるのもどうかと思いますが、少なくとも相手が居心地が悪そうと感じたら少し離れてみたり、あまり初対面の人に対してズカズカと近寄らないようにするなど配慮はしたほうがいいかもしれませんね。
相手を不快にさせないためにも、自分が不快にならないためにもパーソナルスペースを意識して生活してみるのは大切だと思います。